『Tribal Matrix』でベリーダンスからクラブまで幅広いシーンより支持を集め たDakini Recordsの新作は、アメリカ西海岸を拠点に活躍するエスノフュージョン・ グループLUMIN (ルーミン) のアルバム『Ketri (ケトリ) 』。
東ヨーロッパと中央アジアが交差し、ツンドラと砂漠の双方が広がるカザフスタン出 身の女性ボーカリストIrina Mikhailova (イリナ・ミカイローヴァ) が、バルカン 地方や中東諸国の伝統歌謡をモチーフに歌い上げる豊かな情感。ソロアーティストと してSix Degreesに所属し、今春Makyoが北アメリカ・ツアーの際に感銘を受けたこ とから11月に東京 / 大阪 / 仙台でのライヴも決定している、中東弦楽器とプログ ラミングをこなすJef Stott (ジェフ・ストット) の奏でる繊細な旋律。卓越したコ ンポーザー / ビブラフォン奏者であり、U.F.O.の作品への参加を始めアシッド・ジャ ズからMNO名義でのメディテーション・アルバムやTrilok Gurtuのリミックスまで、 多方面で個性を発揮するMichael Emenau (マイケル・エメノウ) による音楽性を引 き立たせる的確なエレクトロニック・サウンド。
三者の個性が融合し、サン・フランシスコを中心に盛り上がりを見せるベリーダンス・
スタイル=トライバル・フュージョンを象徴する、エネルギッシュで研ぎ澄まされた
ブレイク・ビートとパーカッションのグルーヴ、荘厳な雰囲気で魂を揺さぶるボーカ
ル、語りかけるように響く中東弦楽器のメロディが一体と なったLumin。
色褪せることのない美しさと先進的なサウンドが結びついた『Ketri』を完成させま
した。
[ lumin ]
Luminは1998年にボーカリストSonja Drakulich率いるバンドStellamaraに参加してい
た、Jef StottとMichael Emenauのユニットとして結成。同年サン・フランシスコの
レーベルCity Of Tribesより1st アルバム『Datura』を発表。当地独特のニューエイ
ジとトリップ・ホップ、Jefによる多彩なワールド・ミュージックの要素を含んだ作
品として脚光 を浴びる。2002年にはオーガニックなパーカッション / ドラムのパフ
ォーマンスで知られるトランス・アクトMedicine DrumやABA Structure (Kenji
Williams) のボーカリストで知られると同時に数々のソロ作品、WomadからBig Chill、
Samothraki等ヨーロッパ各地の野外フェスティバルに出演するIrina Mikhailovaが加
わり、2nd アルバム『Hadra』が完成。ドラムン・ベースに中東弦楽器が組み合わさ
り、よりリズムが強調された本作は、リリース元である70年代から西海岸のアンビエ
ント・カルチャーを支えているHearts Of Space、北米のニューエイジ~アコースティッ
ク・サウンドを紹介するラジオ番組Echoesのサポートにより、その名をいっそう広げ
る。リリースから時が経つにつれ、その艶やかなボーカルや明瞭なグルーヴがベリー
ダンス・シーンでトップ・ダンサーの間で話題となるとともに、Six
Degreesから登場したAzam Ali率いるNiyazとその音楽要素とゴシックな雰囲気といっ
た共通項がアメリカを中心に認知され、Luminの存在感を引き立たせた。
[ ketri ]
オープニング・トラック「Izgrala」は厳かな雰囲気の中から、高みへと駆け上がる
ドラムン・ベースのグルーヴとマケドニアの伝統歌唱が壮大に響 き、流麗なウード
の旋律が追従する、Luminの力強さが解き放たれる。アルバム・タイトルでもある
「Ketri」は重厚なビートを包むように物悲しいジプシーのラブソングが響くエスノ・
チルアウト。彼らの新たな側面が開花したとも言えるのが「Gostiki」だろう。催眠
的なトランスのビートと巧み
に打ち鳴らされるダルブッカ、それらを取り囲み渦を巻くコーラスによって祝祭と本
質的なトランスを感じさせる。続く「Lycian Way」は『Tribal Matrix』にも収録さ
れていた変拍子のグルーヴに、叙情的なメロディが柔らかに絡むミドルイースタン・
ブレイクス。アルバム中盤には勇猛に突き進むボーカルとビートを高速ダルブッカが
煽る「Heyamo」、ブルガリアに伝わる歌詞をアレンジし幽玄なムードを醸す「Dimcho」
へと緩急自在な流れ
を描く。緩やかに波を打つダブラに甘美な弦楽器の調べと、抱擁感に満ちたボイスの
囁きが溶け合った女性的な側面が光る「Napali」。「Tashto」では再びブルガリアの
歌と強靭なブレイク・ビートが入り交じり、荘厳な空気感が立ちこめる。感情の高ぶ
りを見事に表現した展開はダンス・パフォーマンスに映える一曲。ラスト・トラック
は囚われの身となった美しい人魚の悲哀を歌ったロシアの伝承を口ずさみ、自由へ想
いを馳せた『Rusalki』によって幕を閉じる。
Luminの新たな姿は、Irinaの生まれ育ったバルカン地方(南東ヨーロッパ)の文化背景
を色濃く映し、感情をより高い次元へと導くスピリチュアリティと斬新なエスノ・フ
ュージョン~トライバル・サウンドが融合した『Ketri』へと実を結んでいる。